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2019年四半期第四期読書レポート

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総評

 今期はアンソロジーが収穫でした。『クトゥルーはAIの夢を見るか?』『変愛小説集』『変愛小説集 日本作家編』『宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー』『実験小説名作選』『20世紀ラテンアメリカ短篇選』『時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー』『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』『不思議の国のアリス ミステリー館』『アリス殺人事件』『平成ストライク』…。特に『変愛小説集』の編者である翻訳家の岸本佐知子はかなりお気に入りとなり、エッセイ(『ねにもつタイプ』『なんらかの事情』)も読んでみました。
 また前期終わりごろ(9月)から漫画も読んでいて『ダンジョン飯』(九井諒子)、『無限大の日々』『惑星の影さすとき』(八木ナガハル)、『乙女文藝ハッカソン』(山田しいた)などを見つけることが出来ました。九井諒子は短篇集が収穫でした。漫画の短篇集は探しにくいので今後の研究課題でしょうか。
 また、別件のため敢えて変な書籍も見つけ次第積極的に読んで行きました。例えば『『人間にとってスイカとは何か』』『日本原発小説集』『細菌ハックの冒険』『人間にとってスイカとは何か』『離散 スワヒリ語小説』『不思議の国のグプタ』『量子館殺人事件』『天空城殺人事件』『ランボー怒りの改新』『田紳有楽』…。

 ノンフィクション・評論系は『150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか』『氷室冴子とその時代』などが面白かったです。

注目の書籍

『惑星の影さすとき』(八木ナガハル,駒草出版,2019)

読了日:2019/10

 やはり「無限登山」が白眉で、次いで「2^999」が好み。題材の選び方がどれも上手い印象を受けます。「無限登山」は夏休みに二人の女の子が無限に高い山に登る話で実質的には数学SFマンガで、これを年刊日本SF傑作選で読んだとき正直「求めていたモノはこれだ!」と確信しました。「2^999」はジャンケンで999連勝するには何人必要か?という話から宇宙の構造に話が広がっていきます。他の「地球貫通トンネル」「鳩の餌を作っている会社だけど何でも質問に答えます」なども面白かったです。



『変愛小説集』『変愛小説集 日本作家編』(岸本佐知子(編),講談社)

読了日:2019/10

 "変"な恋愛小説を集めたアンソロジー2冊。海外篇は「まる呑み」や「お母さん攻略法」の他、徐々に皮膚が宇宙服に変化してしまう「僕らが天王星に着くころ」、妹のバービー人形に恋してしまう「リアル・ドール」、磁器にとりつかれた女性の「柿右衛門の器」、女性だけの島で育った女の子たちが流れ着いた男性に出会う「母たちの島」が印象に残ります。
 書き下ろしの国内篇は"変"すぎてほぼ全篇が幻想小説になってしまっていますが、文字と体が混ざりあう多和田葉子の「韋駄天どこまでも」、栓抜きが仕込まれた少女人形の深掘骨の「逆毛のトメ」が好み。その他、本谷有希子、木下古栗、安藤桃子、吉田篤弘の作品が印象に残りました。



『実験小説名作選』(筒井康隆(編),集英社,1980)

読了日:2019/10

 正直どれも傑作で現時点(2019)では最も好みのアンソロジー。他にも「~小説傑作選」が出ているが、このテーマを採用したことにまずシビレます。幻想的な半村良、藤枝静男、梶井基次郎、伊藤整、坂口安吾などの作品、タイポグラフィが利いた夢枕獏や小松左京の作品、ひたすら馬鹿馬鹿しい横田順彌作品など良かった作品はたくさんありますが、初読/未知作家ということで「一家団欒」(藤枝静男)、「集中講義」(かんべむさし)、「海の城」(殿谷みな子)、「大いなる正午」(荒巻義雄)を推します。特に藤枝静男の作品が気になります。



『氷室冴子とその時代』(嵯峨景子,小鳥遊書房,2019)

読了日:2019/11

 氷室冴子と「少女小説」を追った伝記。元々文学指向で、「少女小説」の意味が変化するにつれて安易にひとくくりにして呼ばれるのを嫌がるようになっていったということは聞いて(読んで)いましたが、その背景を知ることができたと思います。というか、それよりも1957年生は小説家・漫画家だと横山秀夫、高橋留美子、森博嗣等がいて、まだまだ現役という印象が強いので「もう伝記が書かれる(=「歴史上」の人物になってしまった)のか」という衝撃が結構あります。ちなみに私はこの書籍における「断絶」世代ですが、「氷室冴子」との出会いは、中学校の図書室にあった「なんて素敵にジャパネスク」を同級生が読んでいるのを見て、自分も読んでみたのがきっかけ。その後進学してぼちぼち自分でも揃えるようになりました。



『これはペンです』(円城塔,新潮社,2014)

読了日:2019/11

 文章自動生成システムを開発した叔父から様々な形式の手紙が私(姪)に届くまさにシュールレアリスムな作品。作中では叔父とは手紙のやり取りだけで終わり、すなわち「叔父が書いた手紙」だけが存在して「叔父」の存在自体には何も踏み込んでいません。果たして叔父は存在するのか、それとも存在する手紙から演繹的に定義された、姪の意識の狭間にしか存在しない存在なのか。更に言えばこの物語は”文字通り”文章で記されており、すなわち姪の思考を通した我々読者の思考の中にしか叔父は存在しないのではないか。メタフィクションとはつまりそういうことなのだろうか。同じことは多分この本(または円城塔)の様々な読者が感じているだろうが、書かずにはいられません。芥川賞受賞作の「道化師の蝶」より個人的には好みでした。



『ねにもつタイプ』(岸本佐知子,筑摩書房,2010)

読了日:2019/12

 翻訳家である岸本佐知子のSF(?)エッセイ。「年刊日本SF傑作選」で知って、「変愛小説集」で完全にはまりました。「ねにもつ」というか「あたまにのこる」エッセイでした。特に仕事中に思考が逸れていく系(「ニュー・ビジネス」「毎日がエブリデイ」「Don't Dream」「ツクツクボウシ」「難問」)が好き。他には「ホットグルグル問題」とか「むしゃくしゃして」とか「マイ富士」とか。あと気になったのは、「べぼや橋」もそうですが(一応検索してみた)、「ブラウン運動の真似」。「毎日がエブリデイ」(P78)と「ツクツクボウシ」(P175)に出てくるが、どちらも「ブラウン運動の真似をしてコーヒーをこぼした」と書いてありました。どんな動きなんだろう?と謎は深まるばかり。



『うつくしい繭』(櫻木みわ,講談社,2018)

読了日:2019/12

SFと純文学両方にまたがるような作品。彩瀬まるのような系統で読みやすい。最後に入っている、奇妙な貝が生息するという島を舞台にした女子大生同士の関係が美しい「夏光結晶」が一番好み。この作品は東ティモール、ラオス、南インド、そして日本の南西諸島が舞台ですが、他の作品も例えば「ゲームの王国」(小川哲)はカンボジア、「ハロー・ワールド」(藤井太洋)の後半はタイ、ベトナム、マレーシア「サンギータ」(アマサワトキオ)はネパール、「百年泥」(石川遊佳)はインドが舞台なので、これからのブームは東南アジアや南アジアなのかもしれません。

読了リスト(123冊)

※注目作品は太字
書名著者名出版社出版年
10月井辻朱美歌集井辻朱美沖積舎2001
古典BL小説集ラシルドほか平凡社2015
クトゥルーはAIの夢を見るか?和田賢一ほか青土社2019
カオスの紡ぐ夢の中で 〈数理を愉しむ〉シリーズ金子邦彦早川書房2010
日本原発小説集井上光晴ほか水声社2011
その先には何が!?じわじわ気になる(ほぼ)100字の小説北野勇作キノブックス2018
新国誠一詩集新国誠一思潮社2019
竜の学校は山の上 九井諒子作品集九井諒子イースト・プレス2011
無限大の日々八木ナガハル駒草出版2018
ミステリークロック貴志祐介角川書店2017
ドミトリーともきんす高野文子中央公論新社2014
宇宙船オロモルフ号の冒険石原藤夫早川書房1982
Boy's Surface円城塔早川書房2008
動きの悪魔ステファン・グラビンスキ国書刊行会2015
惑星の影さすとき八木ナガハル駒草出版2019
太陽・惑星上田岳弘新潮社2014
蛸 ―想像の世界を支配する論理をさぐる―ロジェ・カイヨワ青土社2019
変愛小説集岸本佐知子(編)講談社2008
変愛小説集 日本作家編岸本佐知子(編)講談社2014
アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー マーク・トウェインコレクション 16マーク・トウェイン彩流社2000
細菌ハックの冒険 マーク・トウェインコレクション 9マーク・トウェイン彩流社1996
人間にとってスイカとは何か ―カラハリ狩猟民と考える―池谷和信臨川書店 2014
離散 スワヒリ語小説サイード・アフメド・モハメッド東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所2003
不思議の国のグプタ ―飛行機は、今日も遅れる―ヒロ前田/清涼院流水アルク2013
そして、僕はOEDを読んだアモン・シェイ三省堂2010
数学的帰納の殺人草上仁早川書房2009
スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官川瀬七緒講談社2019
雪が白いとき、かつそのときに限り陸秋槎早川書房2019
実験小説名作選 日本名作シリーズ 12筒井康隆(編)集英社1980
表現の冒険 戦後短篇小説再発見 10内田百閒ほか講談社2002
ケータイ小説的。 “再ヤンキー化"時代の少女たち速水健朗原書房2008
月まで三キロ伊与原新新潮社2018
挑戦者たち法月綸太郎新潮社2016
ショートショートドロップス新井素子(編)キノブックス2019
文学2019多和田葉子ほか講談社2019
11月「神田川」見立て殺人 間暮警部の事件簿鯨統一郎小学館2003
S-Fマガジン 2019年4月号早川書房2019
虫と歌 市川春子作品集市川春子講談社2009
二歩前を歩く石持浅海光文社2016
宇宙倫理学入門稲葉振一郎ナカニシヤ出版2016
宇宙倫理学伊勢田哲治ほか昭和堂2018
2^999八木ナガハルKindle2016
正方形白井慶太Kindle2019
ざんねんなスパイ一條次郎新潮社2018
150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか瀧澤美奈子ベレ出版2019
変身のためのオピウム多和田葉子講談社2001
絵本の守護者 編集者にドラゴンは倒せますか?神秋昌史マイクロマガジン社2018
青い脂ウラジーミル・ソローキン河出書房新社2012
氷室冴子とその時代嵯峨景子小鳥遊書房2019
短篇五芒星舞城王太郎講談社2012
量子館殺人事件廣真希暖流社2004
鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。川上和人新潮社2017
メルカトルかく語りき麻耶雄嵩講談社2011
少女禁区伴名練角川書店2010
謎々 将棋 囲碁新井素子ほか角川春樹事務所2018
しらみつぶしの時計法月綸太郎祥伝社2013
20世紀ラテンアメリカ短篇選ガルシア=マルケスほか岩波書店2019
これはペンです円城塔新潮社2014
天空城殺人事件八槻翔メディアファクトリー2018
野ばら長野まゆみ河出文庫1992
ランボー怒りの改新前野ひろみち星海社2016
ハイウイング・ストロール小川一水朝日ソノラマ2004
ヤン一族の最後 原爆児童文学集 1三浦精子汐文社1985
新発見 平和センタクキ 原爆児童文学集 10北川幸比古汐文社1985
星からきたカード 原爆児童文学集 11大川悦生汐文社1985
魔法のぶた 原爆児童文学集 12司修汐文社1985
いつか緑の木かげで 原爆児童文学集 13江口宣汐文社1985
紀元55年のユートピア 原爆児童文学集 14梅原賢二汐文社1985
地下別荘(シェルター)の十日間 原爆児童文学集 27桜井信夫汐文社1986
宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー高山羽根子ほか東京創元社2019
時を歩く 書き下ろし時間SFアンソロジー松崎有理ほか東京創元社2019
数学から創るジェネラティブアート Processingで学ぶかたちのデザイン巴山竜来技術評論社2019
12月CITY 1あらゐけいいち講談社2017
なめくじに聞いてみろ都筑道夫講談社1979
CITY 2あらゐけいいち講談社2017
乙女文藝ハッカソン 1山田しいた講談社2018
CITY 3あらゐけいいち講談社2017
CITY 4あらゐけいいち講談社2018
CITY 5あらゐけいいち講談社2018
CITY 6あらゐけいいち講談社2018
献灯使多和田葉子講談社2014
銀河帝国の弘法も筆の誤り田中啓文早川書房2001
蹴りたい田中田中啓文早川書房2004
イヴの末裔たちの明日 松崎有理短編集松崎有理東京創元社2019
乙女文藝ハッカソン 1山田しいた講談社2018
乙女文藝ハッカソン 2山田しいた講談社2019
乙女文藝ハッカソン 3山田しいた講談社2019
小説紙の消える日 森林メジャーの謀略森山剛廣済堂出版1982
あがり松崎有理東京創元社2013
コミック錦鯉物語徳田博之新日本教育図書2007
なぜオフィスでラブなのか西口想堀之内出版2019
わたしは菊人形バンザイ研究者川井ゆう新宿書房2012
三月は深き紅の淵を恩田陸講談社2001
皆勤の徒酉島伝法東京創元社2015
このミステリーがすごい! 2020年版宝島社2019
FUNGI 菌類小説選集 第Iコロニーオリン・グレイ,シルヴィア・モレーノ=ガルシア(編)P-VINE2017
FUNGI 菌類小説選集 第IIコロニーオリン・グレイ,シルヴィア・モレーノ=ガルシア(編)P-VINE2018
ねにもつタイプ岸本佐知子筑摩書房2010
読書で離婚を考えた。円城塔/田辺青蛙幻冬舎2017
月の部屋で会いましょうレイ・ヴクサヴィッチ東京創元社2014
椿宿の辺りに梨木香歩朝日新聞出版2019
珍饌会 露伴の食幸田露伴講談社2019
このライトノベルがすごい! 2020宝島社2019
誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選野﨑まど・大森望(編)早川書房2017
図書館逍遥小田光雄編書房2001
田紳有楽藤枝静男講談社1976
うつくしい繭櫻木みわ講談社2018
現代思想 2019年8月号 特集 アインシュタイン青土社2019
なんらかの事情岸本佐知子筑摩書房2012
いつか深い穴に落ちるまで山野辺太郎河出書房新社2018
S-Fマガジン 2019年6月号早川書房2019
漫才刑事田中啓文実業之日本社2016
力士探偵シャーロック山田中啓文実業之日本社2018
百万の手畠中恵東京創元社2006
S-Fマガジン 2019年8月号早川書房2019
空気頭藤枝静男講談社1967
欣求浄土藤枝静男講談社1970
本屋さんのアンソロジー大崎梢ほか光文社2014
秘湯中の秘湯清水義範新潮社1993
100億人のヨリコさん似鳥鶏光文社2017
不思議の国のアリス ミステリー館中井英夫ほか河出書房新社2015
アリス殺人事件有栖川有栖ほか河出書房新社2016
平成ストライク青崎有吾ほか南雲堂2019

読了作ベストエントリー

書名著者名
カオスの紡ぐ夢の中で 〈数理を愉しむ〉シリーズ金子邦彦
Boy's Surface円城塔
惑星の影さすとき八木ナガハル
変愛小説集岸本佐知子(編)
変愛小説集 日本作家編岸本佐知子(編)
人間にとってスイカとは何か ―カラハリ狩猟民と考える―池谷和信
実験小説名作選 日本名作シリーズ 12筒井康隆
挑戦者たち法月綸太郎
氷室冴子とその時代嵯峨景子
鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。川上和人
これはペンです円城塔
ランボー怒りの改新前野ひろみち
銀河帝国の弘法も筆の誤り田中啓文
蹴りたい田中田中啓文
イヴの末裔たちの明日 松崎有理短編集松崎有理
乙女文藝ハッカソン 1~3山田しいた
皆勤の徒酉島伝法
ねにもつタイプ岸本佐知子
誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選野﨑まど・大森望(編)
田紳有楽藤枝静男
うつくしい繭櫻木みわ
不思議の国のアリス ミステリー館中井英夫ほか
アリス殺人事件有栖川有栖ほか
平成ストライク青崎有吾ほか


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