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2019年四半期第三期読書レポート

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総評

 今期の注目作は何と言ってもついに出た「三体」(劉慈欣)でしょうか。割とオーソドックスなファーストコンタクトSFで、安心して読めました。続きも楽しみ(後述)。
 他のトピックは、伴名練のSF界に対する檄文(大変衝撃を受け、謹んで書籍版を買わさせて頂きました)、最後の年刊日本SF傑作選(収録作家が判明した段階で収録作予想をしてみました。結果はまずまずではないでしょうか(後述))。あとはNOVA第1期のまとめ読み(これにて全巻制覇)。「糞袋」(藤田雅矢)、「BH85」(森青花)、「隣のずこずこ」(柿村将彦)の日本ファンタジーノベル大賞受賞作のまとめ読みなどなど。
 海外作品は、前述の「三体」の他に、「偶然仕掛け人」(ヨアブ・ブルーム)、「方形の円 (偽説・都市生成論)」(ギョルゲ・ササルマン)、「パリンプセスト」(キャサリン・M・ヴァレンテ)などを読みました。ジェイソン・レナルズの「エレベーター」はタイポグラフィが利いている全篇が詩で構成された実験的な内容で面白かったです。

注目の書籍

『美しい星』(三島由紀夫,新潮社,1962)と『地球星人』(村田沙耶香,新潮社,2018)

読了日:2019/07

 三島由紀夫「美しい星」と村田沙耶香「地球星人」を合わせて読んでみました。
 『美しい星』は斎藤美奈子曰く「SF妊娠ファンタジー」(「妊娠小説」文庫版P66)と評していて俄然興味がわいた三島由紀夫の異色作(かどうかは他の作品を読んでいないので何とも言えない)。「妊娠小説」を読んでからこれを読むと、確かに「避妊しろよ」と思ってしまいました。『地球星人』は、設定は魅力的ですが彼女の作品の主人公からは社会への同化願望がありながら根本的な所では拒絶しているという自己矛盾を強く感じる気がします。
 両作品とも、周囲との違和感からの「異星人」であることの目覚め、他の「異星人」との出会い、その意識の啓蒙と挫折、傍から見れば自滅に見える当人たちにとっての絶頂という結末。そしてどちらもSF的発想(というか要素)を用いながら「SFになりきっていない」所がSF者からすれば惜しくもあり、面白くもあり。初出誌も「新潮」だし、執筆時の年齢も40歳弱で奇妙な符合が見られます。
 …と書いてはみましたが、別に村田沙耶香が三島由紀夫の作品から盗作しただろと糾弾するつもりはないです。むしろ意図としてはその逆で、言いたいことはこれだけ、「共通点を探しながら読むのって面白い」。どちらも未読の方は是非合わせて読んでみて下さい(できれば「妊娠小説」も)。



『三体』(劉慈欣,早川書房,2019))

読了日:2019/07

 内容については特に言うことはないというか散々既に他で語られていましたが、かなり直球のファーストコンタクトモノの本格SF。雰囲気は各評者が例えとしてあげている作品のような感じで、日本の流行の最先端の様だというわけではないが、それだけに(翻訳作品としては)かなり読みやすい(大森望の文体の成果か?)。個人的にはVRゲーム「三体」パートと史強と汪淼の関係性(特に史強)が読みどころだと思います。3部作とのことだが、本書の内容は全体からすればかなり序盤で終わっている感じなので続刊が楽しみ。日本語版の完結を切に願います。



『NOVA 第1期』(大森望(編),河出書房新社,2009~2013)

読了日:2019/07

 NOVA1期をまとめて読んだので個人的な順位をつけてみました。
 1作家1作品とすると、

  1. 「コズミックロマンスカルテット with E」(小川一水,NOVA7)
  2. 「バベルの投獄」(法月綸太郎,NOVA2)
  3. 「ゴルコンダ」(斉藤直子,NOVA1)
  4. 「忘却の侵略」(小林泰三,NOVA1)
  5. 「万物理論(完全版)」(とり・みき,NOVA3)
  6. 「超現実な彼女」(松崎有理,NOVA6)
  7. 「ガラスの地球を救え!」(田中啓文,NOVA1)
  8. 「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」(倉田タカシ,NOVA2)
  9. 「大正航時機綺譚」(山本弘,NOVA10)
  10. 「激辛戦国時代」(青山智樹,NOVA8)
 NOVA全巻(現時点)を対象にすると『NOVA+バベル』より「第五の地平」(野崎まど)と「Φ(ファイ)」(円城塔)、『NOVA+屍者の帝国』より「小ねずみと童貞と復活した女」(高野史緒)と「屍者狩り大佐」(北原尚彦)、『NOVA2019春』より「お前のこったからどうせそんなこったろうと思ったよ」(赤野工作)が入ります。(順に6位-7位,5位-6位,4位-5位の間、残り2つは9位-10位の間に順に入る)



『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎,光文社,2017)

読了日:2019/07

 理系版の「ルワンダ中央銀行総裁日記」という感じでしょうか(違う?)。蝗害は非常に興味深い現象で、特に中国を舞台にした小説を読んでいるとたまに出てくるので気になっていました。著者は砂漠は砂漠でもゴビ砂漠ではなくサハラ砂漠の方へ研究しに行きますが、それにしてもバッタを専攻した動機が「バッタに食べられたい」だというのが凄い。私もそれだけの熱量があるだろうかと自省させられます。未来に対して夢も希望もある中学生~大学初年度位に読んでおきたい本です。
 ちなみに、これと「ルワンダ中央銀行総裁日記」と「人間にとってスイカとは何か」とを合わせて、名付けて「アフリカ3部作」。



『BISビブリオバトル部シリーズ』(山本弘,東京創元社,2014~2017)

読了日:2019/08

 近くでビブリオバトルが開催されており気になったため、現在刊行の巻まとめて全て読んでみました。確かにビブリオバトルの魅力は伝わりましたが、主人公以外の登場人物が紹介する本も含めてジャンルは幅広いもののやはり山本弘の趣味が色濃く出ており、後書きで「SFを読んでない人に、SFの魅力をどう伝えればいいのか」(P418)と書いてあるように、ビブリオバトルについての小説と言うよりはSFについての小説という感じがしました。同様に興味をもった知人がこの本を読みたいと言っていましたが、(多分)山本弘がSF作家だとは知らない様なので(彼の作品はこれしか知らない様だった)、序盤で挫折しなければいいが…というのは大きなお世話だが思ってしまいました。「ビブリア古書堂」も「文学少女」もこの本ほどオタク的知識は披露されて無かったし…。また、やはり山本弘の作品は思想的に強い圧力を受けるので素直に提唱者の谷口さんの著書を読んだ方がノイズが無くて良い気がするがどうでしょうか。
 まあ、主人公の台詞「おしゃれにかけるお金があるなら、SF買いますよ。ファウンデーションなんてアシモフがあれば十分です。」(P213)に笑えるなら充分面白く読めると思います(わからなくても問題は無いが)。
 第四部のこのエピローグは誰がどう見ても「伏木空のライバル出現!」で地区大会、全国大会、…と話が続く感じなので、このまま中断して欲しくはないが、それだけに著者の山本弘の病状の経過が心配です。



『おうむの夢と操り人形 年刊日本SF傑作選』(大森望/日下三蔵(編),東京創元社,2019)

読了日:2019/09

「年刊日本SF傑作選」の最終巻。順に斉藤直子、柴田勝家、西崎憲、三方行成、宮内悠介、円城塔の作品は既読でした。個人的な好みは斉藤直子と円城塔の作品ですが、総合的な評価は、既刊作品では表題作にもなっている藤井太洋の作品、全作品の中では今回の受賞者のアマサワトキオの作品が素晴らしいと思います。今巻で最後ということで過去の巻のフォロー的な内容になっており、前巻の彩瀬まる作品のようなものが無かったのが少し残念。澤村伊智の「愛を語るより左記のとおり執り行おう」は入っていてもおかしくないと思っていましたが…。去年から追いはじめた途端の終了で悲しい。お疲れ様でした。
収録作家が発表された段階で、Twitterに既に流れていた「Kindle Single」と「万象」から採られる作家と漫画家・新人賞受賞作家を除いて収録作予想をしてみたが、9/12が当たっていました。

正誤自信度作者予想作品
円城塔幻字/「新潮」(新潮社)
斉藤直子リヴァイアさん/「万象」(惑星と口笛ブックス)
坂永雄一大熊座/「改変歴史SFアンソロジー」(カモガワSFシリーズ Kコレクション)
×三方行成折り紙食堂(カクヨム)
柴田勝家検閲官/「S-Fマガジン」 (早川書房)
高野史緒「グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行(Kindle Single)」/(Amazon Publishing)
× 田中啓文ホームズ転生/「シャーロック・ホームズたちの新冒険」(東京創元社)
× 飛浩隆流下の日/「NOVA 2019年春号」(河出書房新社)
西崎憲東京の鈴木/「万象」(惑星と口笛ブックス)
長谷敏司1カップの世界/「S-Fマガジン」(早川書房)
藤井太洋「おうむの夢と操り人形(Kindle Single)」/(Amazon Publishing)
古橋秀之四つのリング/「百万光年のちょっと先」(集英社)
日高トモキチレオノーラの卵/「小説宝石 5月号」(光文社)
水見稜アルモニカ/「小説4集~Phoenix外伝」(ワセダ・ミステリ・クラブ)
宮内悠介クローム再襲撃/「超動く家にて 宮内悠介短編集」(東京創元社)
宮部みゆきわたしとワタシ/「小説すばる」(集英社)
×肋骨凹介(予想なし)
× 道満晴明(予想なし)
トキオ・アマサワサンギータ
●…事前情報などで確定/◎…かなり自信あり/〇…まあまあ/△…微妙/*…自信なし/×…予想していない



『サプリメント戦争』(三浦俊彦,講談社,2001)

読了日:2019/09

 久しぶりに変な(誉め言葉)小説を読みました。薬の名前に頑固な店主たちによって「サプリメント戦争」が起き、最後には「真正ハイブリッド隊」なるものが出てくるなど、ストーリーは森見登美彦っぽい感じ。しかし、本篇最初の1ページから薬の名前、成分、効能などか改行無しで延々続いているのにはうんざりしてしまいました。まあ、100ページ位読めば慣れてきて目が滑らなくなるとおもいますが…。ただ、その辺りを省けば分量は1/4位になってしまうかもしれません。サプリメントマニアにおすすめ?作者の方がWeb上で全文公開していました。

読了リスト(103冊)

※注目作品は太字
書名著者名出版社出版年
7月消滅世界村田沙耶香河出書房新社2015
果しなき流れの果に小松左京角川春樹事務所1997
アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー宮澤伊織ほか早川書房2019
美しい星三島由紀夫新潮社2003
地球星人村田沙耶香新潮社2018
卒業式の歴史学有本真紀講談社2013
未来職安柞刈湯葉双葉社2018
地獄八景田中啓文河出書房新社2016
偶然仕掛け人ヨアブ・ブルーム集英社2019
三体劉慈欣早川書房2019
NOVA 1 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2009
NOVA 2 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2010
NOVA 3 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2010
NOVA 4 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2011
NOVA 5 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2011
NOVA 6 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2011
NOVA 7 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2012
NOVA 8 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2012
NOVA 9 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2013
NOVA 10 書き下ろし日本SFコレクション大森望(編)河出書房新社2013
オランダ水牛の謎 安楽椅子探偵アーチー松尾由美東京創元社2005
新版 霊柩車の誕生井上章一朝日新聞社1990
文藝 2019年秋季号河出書房新社2019
蚤のサーカス藤田雅矢新潮社1998
バッタを倒しにアフリカへ前野ウルド浩太郎光文社2017
UFOとポストモダン木原善彦平凡社2006
天体の回転について小林泰三早川書房2010
8月さらば、シェヘラザードドナルド・E・ウェストレイク国書刊行会2018
独創短編シリーズ 野崎まど劇場野崎まどアスキー・メディアワークス2012
独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑)野崎まどアスキー・メディアワークス2015
ゑゐり庵綺譚梶尾真治徳間書店1992
温かな手石持浅海東京創元社2010
火の中の竜 ネットコンサルタント「さらまんどら」の炎上事件簿汀こるものKADOKAWA2018
新装版 七回死んだ男西澤保彦講談社2017
本の雑誌増刊 本屋大賞2011本の雑誌社2011
カム・ギャザー・ラウンド・ピープル高山羽根子集英社2019
透明の猫と年上の妹 <3LDK-RPG>桝田省治エンターブレイン2011
スチームオペラ(蒸気都市探偵譚)芦辺拓東京創元社2012
この橋をわたって新井素子新潮社2019
リラと戦禍の風上田早夕里角川書店2019
タイムマシンでは、行けない明日畑野智美集英社2016
BRUTUS特別編集 合本 危険な読書マガジンハウス2019
方形の円 (偽説・都市生成論)ギョルゲ・ササルマン東京創元社2019
翼を持つ少女 BISビブリオバトル部山本弘東京創元社2014
世界が終わる前に BISビブリオバトル部山本弘東京創元社2016
幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部山本弘東京創元社2015
君の知らない方程式 BISビブリオバトル部山本弘東京創元社2017
NOVA 2019年秋号大森望(編)河出書房新社2019
なめらかな世界と、その敵伴名練早川書房2019
森があふれる彩瀬まる河出書房新社2019
その可能性はすでに考えた井上真偽講談社2018
数学パズル大図鑑Ⅰ(古代から19世紀まで)イワン・モスコビッチ化学同人2018
数学パズル大図鑑Ⅱ(20世紀そして現在へ)イワン・モスコビッチ化学同人2018
9月翼竜館の宝石商人高野史緒講談社2018
おうむの夢と操り人形 年刊日本SF傑作選大森望/日下三蔵(編)東京創元社2019
ビジュアル「国字」字典世界文化社2017
ひとりでよめたよ! 幼年文学おすすめブックガイド200大阪国際児童文学振興財団評論社2019
名作の中の地球環境史石弘之岩波書店2011
十年後のこと東浩紀ほか河出書房新社2016
パリンプセストキャサリン・M・ヴァレンテ東京創元社2019
糞袋藤田雅矢新潮社1995
BH85森青花新潮社1999
隣のずこずこ柿村将彦新潮社2018
美術手帖 2019年10月号美術出版社2019
昆虫食と文明 昆虫の新たな役割を考えるデイビッド・ウォルトナー=テーブズ築地書館2019
エレベータージェイソン・レナルズ早川書房2019
ショートショートの缶詰田丸雅智キノブックス2016
『罪と罰』を読まない岸本佐知子ほか文藝春秋2015
ダンジョン飯 1九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 2九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 3九井諒子エンターブレイン2016
ダンジョン飯 4九井諒子エンターブレイン2017
ダンジョン飯 1九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 2九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 3九井諒子エンターブレイン2016
ダンジョン飯 4九井諒子エンターブレイン2017
サプリメント戦争三浦俊彦講談社2001
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子九井諒子エンターブレイン2012
ダンジョン飯 1九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 2九井諒子エンターブレイン2015
ダンジョン飯 3九井諒子エンターブレイン2016
ダンジョン飯 4九井諒子エンターブレイン2017
ダンジョン飯 5九井諒子エンターブレイン2017
ダンジョン飯 6九井諒子エンターブレイン2018
ダンジョン飯 7九井諒子エンターブレイン2019
ダンジョン飯 8九井諒子エンターブレイン2019
有害無罪玩具詩野うらKADOKAWA2019
偽史山人伝詩野うらKADOKAWA2019
ひきだしにテラリウム九井諒子 イースト・プレス2013
性転換古川智映子角川学芸出版2008
サーチエンジン・システムクラッシュ宮沢章夫文藝春秋2005
人種改良研究所竹井敏講談社ビジネスパートナーズ1988
ひょうすべの国 植民人喰い条約笙野頼子河出書房新社2016
月刊少女野崎くん 公式ファンブック椿いづみスクウェア・エニックス2014
ダンジョン飯 5九井諒子エンターブレイン2017
ダンジョン飯 6九井諒子エンターブレイン2018
ダンジョン飯 7九井諒子エンターブレイン2019
ダンジョン飯 8九井諒子エンターブレイン2019
定本 バブリング創世記筒井康隆徳間書店2019
構造素子樋口恭介早川書房2017
時そばの客は理系だった 落語で学ぶ数学柳谷晃幻冬舎2007
単位物語清水義範講談社1994
念力家族笹公人朝日新聞出版2015

読了作ベストエントリー

書名著者名
消滅世界村田沙耶香
地球星人村田沙耶香
卒業式の歴史学有本真紀
三体劉慈欣
バッタを倒しにアフリカへ前野ウルド浩太郎
独創短編シリーズ 野崎まど劇場野崎まど
独創短編シリーズ (2) 野崎まど劇場(笑)野崎まど
新装版 七回死んだ男西澤保彦
なめらかな世界と、その敵伴名練
おうむの夢と操り人形 年刊日本SF傑作選大森望/日下三蔵(編)
ダンジョン飯 1~8九井諒子
九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子九井諒子
ひきだしにテラリウム九井諒子
定本 バブリング創世記筒井康隆


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